下痢や嘔吐など消化器症状が3週間続くことが慢性腸症と言いますが、獣医学領域ではまだ用語が人のように明確に確立しておらず、 慢性腸症はIBD(炎症性腸疾患)のようになっていますが違います。
慢性腸症はあくまで症状であり原因は様々です。
例えば原因として
これらが除外できれば炎症性腸疾患(IBD)の可能性がある
慢性腸症は内視鏡検査をする前に除外診断がとても大事です。
*当院では炎症性腸疾患の治療に、従来の免疫抑制剤の他に脂肪由来間葉系幹細胞の投与も実施しています。
経過が良好な症例もいるので実際の投与例を以下に紹介します。


参考文献
Perez-Merino EM1, Uson-Casaus et al, Safety and efficacy of allogeneic adipose tissue-derived mesenchymal stem cells for treatment of dogs with inflammatory bowel disease: Endoscopic and histological outcomes, Vet J. 2015 Dec;206(3):391-7.






IBDという診断をしっかりとつけるために内視鏡検査を実施し、希望されれば同時に脂肪も採取します。
IBDでなければ細胞培養は無駄になることもあります。しかし、全身麻酔が一度で終わるのでメリットはあります。
アルブミンが低いと肝臓疾患が疑われることもあり同時に肝生検も実施することがあります。












炎症性腸疾患に関して効果がある可能性が示唆された。
このような症例に関して十分に検討していく必要がある。

他院で胆嚢摘出後に肝酵素が上昇し黄疸がではじめたため当院の肝臓胆嚢診療を受診





初診時は腹水と黄疸があり、食欲もなく痩せていた。
胆嚢摘出時の検査ですでに肝臓は炎症と繊維化を起こし肝硬変のような状態であった 。

皮下脂肪を採取し、脂肪由来幹細胞の投与を実施することになった。
2週間後に直接肝臓内に投与することとなった。

門脈造影では多発性のシャント血管を認めた。

肝臓は肉眼的にも乳白色を呈し生検時には硬化していた。


門脈造影では門脈圧の亢進による多発性のシャント血管(黄色矢印)を認めた。
赤い線よりも上に投与することにより後大静脈に幹細胞がいかずほとんどが肝臓に到達するように投与した。
赤い線よりも下に投与すると直接後大静脈に流入してしまう。


症例はステロイドを減量すると肝酵素が上昇(左スライド黄色矢印)する。
ステロイドを少しずつ増量したが肝酵素の低下は認められないのでADSCを門脈内投与した。
その後は少しずつ肝酵素は減少し、ステロイドを休薬することが可能であった。
肝臓の病理診断は肝硬変のような状態であった。


結論として炎症のある慢性肝臓疾患(肝炎や肝硬変)や炎症性腸疾患に関してはADSC(脂肪由来幹細胞)が効果がある可能性が示唆。
ステロイドを休薬できたことは良好な成果がある。
幹細胞は治療の選択肢として考えて治療をしていく必要あり。
確定診断と適応がとても重要であると考える。
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