学会発表
学会発表

WEB掲載:2025.07.07
【2025年度第110回】日本獣医麻酔外科学会学術集会

腹腔鏡下副腎摘出術を実施した猫の2例

【演者】小林巧
【共同演者】河津充伸、猪野雅俊、重本仁
【所属】王子ペットクリニック 東京どうぶつ低侵襲医療センター

<はじめに>

猫の副腎腫瘍は皮質の腫瘍が一般的で高アルドステロン血症などのホルモン異常を引き起こす稀な疾患である。外科治療として副腎摘出術が選択されるが、周術期の合併症率が高く、犬と同等の死亡率が報告されている。人では腹腔鏡下副腎摘出術が実施されており、近年は犬でも腹腔鏡下副腎摘出術の有用性が示されているが、猫での報告は少ない。今回、猫において左右の副腎腫瘍の症例で腹腔鏡下副腎摘出術を実施し、良好な術後経過を辿った症例を経験したため報告する。

<症例>

①猫、日本猫、12歳齢、避妊雌、4.96 kg、2年ほど前から左副腎の腫大があり、低カリウム血症、高アルドステロン血症を呈すようになった。内科治療で経過をみていたが、左副腎の腫大が進行したため、腹腔鏡下左副腎摘出術を実施した。手術前のCT検査では左副腎の大きさは2.0×1.9×1.6cmで明らかな血管内浸潤は示唆されなかった。

②猫、日本猫、11歳11ヶ月、避妊雌、3.42 kg、1週間前に引きとった保護猫の健康診断で右副腎の腫大、肝酵素の上昇、低カリウム血症、高アルドステロン血症が認められ、腹腔鏡下右副腎摘出術と肝生検を実施した。手術前のCT検査では右副腎の大きさは2.6×2.1×1.6cmで明らかな血管内浸潤は示唆されなかった。

<臨床経過>

①体位は右横臥位で、左の傍腰部に3本のトロッカーを設置、剥離鉗子や超音波メスを使用し左副腎を摘出した。手術時間は145分で周術期に大きな合併症はなく、術後3日で退院した。病理診断は副腎皮質腺癌(脈管浸潤なし)と診断され、術後の補助化学療法は実施していないが、術後198日現在、低カリウム血症や腫瘍の再発は認められていない。

②体位は左横臥位で、右の傍腰部に3本のトロッカーを設置、剥離鉗子や超音波メス、血管クリップを使用し右副腎を摘出した。手術時間は75分で周術期に大きな合併症はなく、術後3日で退院した。病理診断は副腎皮質腺癌(脈管浸潤あり)、同時に実施した肝生検ではリンパ球性門脈肝炎と診断された。術後の補助化学療法は実施せず、肝炎に対してステロイドによる治療を行なっているが、術後77日現在、低カリウム血症や腫瘍の再発は認められていない。

<考察>

腹腔鏡手術では拡大視野が得られるため、細かな血管を封止しながら手術を進めることができる。今回の症例では開腹手術への移行や輸血を必要とするような大きな出血は認められなかった。
Jeffreyらの報告では猫の腹腔鏡下副腎摘出術の手術時間は58~149分と報告されており、今回の症例でも同様の手術時間であった。症例①では左副腎は分厚い脂肪に包まれ、目視ができず、脂肪の剥離に時間を要したため症例②と比較して手術時間が延長したと考えられる。前述の報告でも11例(左副腎腫瘍6例、右副腎腫瘍5例)中4例は開腹手術に移行しており、4例とも左副腎の症例でうち2例は腹腔内脂肪により視野が確保できなかったためとされている。このように猫では左右の副腎で手術の難易度が異なる可能性が示唆され、症例の体格や血管内浸潤の有無など、症例選択の必要はあるが、猫においても腹腔鏡下副腎摘出術は副腎腫瘍における外科治療の選択肢の一つになると考えられた。本検討では症例数が少なく長期的な経過も得られていないため、今後も検討を続けると共に症例を重ねていきたい。

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