猫の乳び胸は胸管のリンパ管圧やリンパ流量の上昇に伴い、胸腔内に乳びが貯留する疾患である。乳び胸に対する外科的治療法は様々な術式が報告されているが、一般的に行われている胸管閉鎖術(TDO)と部分的心膜切除術(PPC)の成功率はFossumらの報告によると68%、Dicksonらは胸腔鏡下でのTDOとPPCの成功率は40%と報告している。胸管は分枝が多くTDOを行う際に胸管を可視化することが必要だが、従来の方法では胸管の確認が困難である場合があり、近年犬でのインドシアニングリーン(ICG)を用いて蛍光させる方法(ICG蛍光法)が報告されている。今回我々は術中にICG蛍光法にて胸管を可視化し、胸腔鏡下でTDOおよびPPCを行い経過が良好である症例に遭遇したためその概要を報告する。
症例は雑種猫、体重5.3kg、2歳7ヶ月齢、去勢雄。6ヶ月齢から肥大型心筋症が認められており、心臓の内科治療を行っていた。呼吸速迫を主訴に来院し乳び胸と診断した。ルチンやステロイドによる内科治療を実施していたが改善が認められないため外科的治療を実施することとした。
胸管結紮は伏臥位に固定し、左側第10肋間に5㎜のソラコポート?を挿入し、カメラで視認しながら左第8肋間と左第11肋間に5㎜のソラコポートを挿入した。胸管付近の剥離を実施した後に後肢の左右の肉球にICGを投与した。IMAGE1 S? RubinaR ( Karl Storz )を用いて胸管を可視化しTDOを実施したのち仰臥位に体位変換し、左右第8肋間と傍剣状突起に5㎜のソラコポートを新たに挿入しPPCを行った。
術後一般状態は安定しており、術後から乳び液の貯留は認められなくなった。手術時間は胸管結紮が78分、部分的心膜切除が127分であった。術後37日で胸腔ドレーンを抜去し現在術後93日経過しているが乳び液の貯留は認められていない。
今回の症例では慢性的な乳び液の貯留により胸膜炎が重度であったが、術中にICG蛍光法を用いることで胸管が明瞭に可視化され、剥離やクリッピングを実施することができた。リンパ管造影CT検査とICG蛍光法を組み合わせることが猫のTOD有効な手段であると考えられた。今後症例数を増やすことで、猫の乳び胸の治癒率や胸管の分岐の可視化、ICGの投与法や投与のタイミングと蛍光時間を検討していく必要があると考えられた。
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