学会発表
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JCVIM 2014

先天性門脈体循環シャントの犬における低血糖とインスリンに関する検討

○水谷真也 1)、鳥巣至道 1)、金子泰之 1)、村岡 2) 、重本仁 1) 2) 、永延清和 1)
1)宮崎大学・農学部附属動物病院研究室、2)東京都・王子ペットクリニック

<はじめに>

先天性門脈体循環シャント(CPSS)は門脈血が直接全身循環に流れ込む血管異常である。 CPSS の血液化学検査での異常所見に低血糖(血糖値< 60 mg/dL)がある。CPSS におけ る低血糖の発生機序は一般的にシャント血管のために肝臓のグリコーゲン貯蔵が少ないこ とが要因と考えられている。しかし、2012 年、Collings らは CPSS の犬において、低血糖 の発生に高インスリン血症が関与していると報告した。このように CPSS における低血糖 の発生機序は明確にされていない。そこで、今回、CPSS の犬における低血糖の発生機序の 解明を目的として、CPSS の犬における絶食時低血糖の発生頻度と食餌負荷試験を用いた血 糖値と血中インスリン濃度の経時的な変化に関して検討を行った。

<材料と方法>

[検討 1]我々が過去に手術を行った CPSS 犬 280 症例の血液化学検査データを参照し、 絶食時低血糖の発生頻度に関して回顧的に検討した。 [検討 2]宮崎大学農学部附属動物病院と王子ペットクリニックにて CPSS と診断された犬 のうち飼い主の同意の得られた 12 症例において食餌負荷試験を行い、血糖値と血中インス リン濃度の経時的な変化(食前、食後 1-5 時間)を検討した。

<結果>

[検討 1]280 症例中 28 症例で絶食時低血糖が認められた(発生頻度:10%)。 [検討 2]12 症例中 2 症例で絶食時低血糖が認められたが、高インスリン血症は認められ なかった。4 症例で食餌負荷後に低血糖が認められ、高インスリン血症が認められた。絶食 時低血糖が認められた 2 症例では、食餌負荷後も血糖値に大きな改善は認められなかった。 また、12 症例すべてにおいて食餌負荷後に高インスリン血症が認められた。インスリノー マの診断に用いられる修正インスリン:グルコース比(AIGR)は低血糖の認められた症例す べてで高値であった。

<考察>

今回、CPSS 犬における絶食時低血糖の発生頻度は 10%で、このような症例では食餌後 も血糖値の大きな改善が認められないことが明らかとなった。食餌負荷試験時に低血糖の 症例では、高インスリン血症ではない症例も存在したが、全例において AIGR が高値であ ったことから、CPSS 犬における低血糖の発生は肝臓のグリコーゲン貯蔵が少ないのではな く、高インスリン血症が大きな要因であると考えられた。 また、食餌負荷後に正常血糖値の症例で高インスリン血症が認められた。医学領域にお いて健康成人に糖負荷試験を実施したところ、同様の結果が得られたという報告がある。 したがって、血中インスリン濃度の測定は低血糖発生時に行うことが有用であると考えら れた。 最後に、今回の検討より CPSS の犬における術後低血糖発生時には食餌やグルコースの 投与を行っても血糖値が改善しない場合があり、低血糖が高インスリン血症によって発生 していることを踏まえた治療が有効であると考えられた。

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