王子ペットクリニック:学会発表23

2020日本獣医再生医療学会:第15年次大会において会長賞を受賞

2020日本獣医再生医療学会:第15年次大会において
会長賞を受賞いたしました

黄疸を伴う肝疾患に脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)を投与した犬の回顧的報告

村上慶祐、重本 仁

王子ペットクリニック

連絡先:e-mail:animal.clinic@oji-pet.jp

TEL:03-3913-2500

【はじめに】

近年、間葉系幹細胞は肝炎や肝線維症に対して効果があることが報告されており、肝酵素や投与法、炎症性サイトカインについて検討されている。 2017年の当学会で黄疸を伴う肝疾患の犬に脂肪由来間葉系幹細胞(以下ADSC)を門脈内に投与した症例を発表した。この症例の経過に非常に興味深い結果が認められたのでここに報告する。

【症例】

症例はジャック・ラッセル・テリア、10歳、体重 7.4 kg の去勢オスで、2015年に胆嚢粘液嚢腫のため紹介元の病院にて胆嚢摘出後3か月で肝酵素が上昇し、黄疸や腹水貯留が認められ当院を同年8月に紹介受診した。 肝臓の病理検査により肝細胞の消失と再生性結節と思われる結節性過形成が認められ、門脈域では小葉間胆管が顕著に増生し、慢性肝炎を示唆する所見であった。そのためステロイド投与を行なったが、肝酵素が安定しない状態と間欠的に黄疸を呈する状態が続き、自家ADSC投与を実施した。

【臨床経過】

初回の自家ADSC投与は門脈から実施し投与後52日で肝酵素は正常値まで改善しステロイドの休薬が可能であった。しかし、初回投与から515日後に肝酵素の顕著な上昇が認められ症例の状態も悪化した。そのためステロイドを再開したが状態が安定せずもう一度全身麻酔下で自家脂肪を採取しADSCを末梢静脈から投与した。それにより再び肝酵素はほぼ正常に戻り、ステロイドも休薬することが可能であった。しかし、その後90日で再び肝酵素の上昇が認められたので、保存した自家ADSCを末梢静脈投与する事とした。その後はおよそ90日間隔で自家ADSCを末梢静脈投与し、ステロイドは使用せずに肝酵素の顕著な上昇や一般状態の悪化を防ぐことができている。現在、初回投与から末梢静脈投与を8回行い、1182日経過しているが状態は良好である。

【考察】

前回の発表では、この症例に自家のADSCが効果的であったこと、局所投与が有効だったのではないかという見解を報告した。今回、他家の投与は行ってはいないが、自家を何度投与しても反応があること、投与経路に効果の差があることが示唆された。今後はこのような症例におけるサイトカインなどの変化についても解明していく必要があると考えられる。

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