再生医療
再生医療
再生医療、それは薬でもなく、手術でもなく、患者自身(自家)あるいは他の健康な子(他家)の細胞を用いる治療です。
患者自身の自己治癒能力を引き出し、増幅する治療法です。これにより、従来治せなかった病気が治るようになってきていると世界中で注目され、研究されている治療法です。
当院では積極的に再生医療を取り入れております。
ご質問などありましたらお気軽にお電話にてご相談ください。
再生医療ってなんだろう?
~幹細胞は『小さなお医者さん』~
どうやって治療するの?
脂肪や骨髄を採取し、体外で幹細胞を増やして 点滴や注射で体内に戻すことで治療します。 さらには自分の幹細胞だけでなく 「ほかのワンちゃん・ネコちゃん」の幹細胞を使って 治療することができます。
生き物が持つ再生の力は、はるか昔からわかってい ました。 そして「再生医療」の歴史は1970年代から始まっています。
今、ようやく「再生の力」を使った治療が受けられる 時代になりました。このことは、ヒトだけでなく 動物たちにとっても素晴らしいことだと思います。
再生医療には、「病気に苦しむ多くの動物たちを新たな方法で救う ことができるのではないか?」という想いがあります。
まずは「再生医療」に興味を持ってください。 そこから愛犬や愛猫を救う可能性が見つかるかも
しれません。
生き物の神秘「再生の力」
生き物はもともと「自然治蔵」する力を持っています。 この自然治癒こそ、まさしく「再生の力」によるものなのです!
細胞で病気を治す!?
傷ついた細胞を修復し、新しいものに交換=再生 す る力を使って病気やケガを治すのが「再生医療」です。再生の力は「幹細胞(かんさいぼう)」というおおもとの細 胞が頑張ることで発揮されます。
幹細胞は小さなお医者さん
幹細胞の住まい …それは「脂肪」や「骨髄」です!
そして幹細胞は、その働きぶりから「小さなお医者 さん」とも言えます。どんなお仕事をしているか見てみましょう!
治療効果が期待されている疾患
多くの病気に効果が期待され、幹細胞を使った治療はヒト医療 でも始まっています。
治療法がないと諦める前に…
再生医療は夢物語ではなく、手の届く「現実の治療」です。 しかし、まだまだわからないことも多く、まさにこれからの治療だと思います。 ぜひ一度、獣医師と再生医療について話してみてください。 きっと選択肢が広がると思います。
簡単にまとめると
生き物には傷や病気を修復する力があり、それを強め治療に応用できないかということです。
その主役が幹細胞です。
炎症がある場所に駆けつけて炎症を抑える物質を一定の期間放出し続ける。
つまり薬のような役割をする細胞なのです。
具体的に言うと上に記していますが当院で適応としているのは
1慢性腸症で炎症性腸疾患(IBD)と診断された症例
2炎症所見のある肝臓疾患:肝硬変
3脊髄損傷:事故や椎間板ヘルニアなどで麻痺がある
4免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
5乾性角結膜炎(KCS)網膜萎縮
6免疫介在性関節炎
7口内炎や脂肪織炎などの免疫疾患
上記のものになります。
1.慢性腸症で炎症性腸疾患(IBD)と診断された症例
下痢や嘔吐など消化器症状が3週間続くことが慢性腸症と言いますが、獣医学領域ではまだ用語が人のように明確に確立しておらず、慢性腸症はIBD(炎症性腸疾患)のようになっていますが違います。
慢性腸症はあくまで症状であり原因は様々です。
例えば原因として
・食事 :食事に問題
・細菌 :ジアルジアやクロストリジウム、カンピロバクターなど抗生物質に反応
(やめると再発する症例は他の疾患を考える)
・寄生虫 :鞭虫など
・ウイルス:パルボやコロナ、サーコウイルスなど
・腫瘍性 :リンパ腫や消化管の腫瘍など
これらが除外できれば炎症性腸疾患(IBD)の可能性がある
慢性腸症は内視鏡検査をする前に除外診断がとても大事です。
*当院では炎症性腸疾患の治療に、従来の免疫抑制剤の他に脂肪由来間葉系幹細胞の投与も実施しています。
経過が良好な症例もいるので実際の投与例を以下に紹介します。
参考文献
Pérez-Merino EM1, Usón-Casaús et al, Safety and efficacy of allogeneic adipose tissue-derived mesenchymal stem cells for treatment of dogs with inflammatory bowel disease: Endoscopic and histological outcomes, Vet J. 2015 Dec;206(3):391-7.
当院でのIBD(炎症性腸疾患)の診断は内視鏡と腹腔鏡で実施。
IBDという診断をしっかりとつけるために内視鏡検査を実施し、希望されれば同時に脂肪も採取します。
IBDでなければ細胞培養は無駄になることもあります。しかし、全身麻酔が一度で終わるのでメリットはあります。
アルブミンが低いと肝臓疾患が疑われることもあり同時に肝生検も実施することがあります。
自家および他家の脂肪由来間葉系幹細胞を投与した
特発性炎症性腸疾患の犬の2例
症例1:アルブミン1.9と低下してきたため内視鏡検査を実施病理診断 炎症性腸疾患例
症例1:幹細胞を3回投与しアルブミンは2.6まで上昇した
症例2:アルブミンは1.9まで下がり内視鏡検査を実施
症例2:病理検査:炎症性腸疾患
症例2:自家と他家に反応に差があり?。結果的に免疫抑制剤はきれなかった。
炎症性腸疾患に関して効果がある可能性が示唆された。
このような症例に関して十分に検討していく必要がある。
黄疸を伴う肝疾患にADSC(自家脂肪由来間葉系幹細胞)投与を実施した犬の1例
他院で胆嚢摘出後に肝酵素が上昇し黄疸がではじめたため当院の肝臓胆嚢診療を受診
初診時は腹水と黄疸があり、食欲もなく痩せていた。
胆嚢摘出時の検査ですでに肝臓は炎症と繊維化を起こし肝硬変のような状態であった 。
皮下脂肪を採取し、脂肪由来幹細胞の投与を実施することになった。
2週間後に直接肝臓内に投与することとなった。
門脈造影では多発性のシャント血管を認めた。
肝臓は肉眼的にも乳白色を呈し生検時には硬化していた。
門脈造影では門脈圧の亢進による多発性のシャント血管(黄色矢印)を認めた。
赤い線よりも上に投与することにより後大静脈に幹細胞がいかずほとんどが肝臓に到達するように投与した。
赤い線よりも下に投与すると直接後大静脈に流入してしまう。
症例はステロイドを減量すると肝酵素が上昇(左スライド黄色矢印)する。
ステロイドを少しずつ増量したが肝酵素の低下は認められないのでADSCを門脈内投与した。
その後は少しずつ肝酵素は減少し、ステロイドを休薬することが可能であった。
肝臓の病理診断は肝硬変のような状態であった。
結論として炎症のある慢性肝臓疾患(肝炎や肝硬変)や炎症性腸疾患に関してはADSC(脂肪由来幹細胞)が効果がある可能性が示唆。
ステロイドを休薬できたことは良好な成果がある。
幹細胞は治療の選択肢として考えて治療をしていく必要あり。
確定診断と適応がとても重要であると考える。