新しい腫瘍外科手術(がん転移を検出する光線力学診断PDDと治療PDT)

新しいがん手術や治療のツールとして

動物医療では、がんなどの手術の際、小さな転移病巣を肉眼で見つけることは不可能であった。しかし、5-アミノレブリン酸(5ALA)を術前に飲ませることで手術中に腫瘍を光らせることができる。術中に光らせることができれば、リンパ節などに転移したがん細胞も発見することができる可能性がある。

5ALAは生体内に存在するアミノ酸で、ミトコンドリアでプロトポルフィリン(PpIX)に生合成される。がんにPpIXが過剰に集積、これに青色(375〜445nm)の光を照射すると赤色(600〜740nm)に発色する。このようながんの診断法を光線力学診断(ALA-PDD)と言います。そして、がん細胞に特定の光を照射し、活性酸素を発生させてがん細胞に傷害を与える治療を光線力学治療(ALA-PDT)と言います。

5-ALAはヘムの前駆体としてエネルギー代謝に重要な役割を担っており、細胞内に取り込まれた5-ALAはミトコンドリア内に移動し、PpIXに生合成されます。PpIXは正常細胞ではヘムに代謝されますが、がん細胞では2価鉄が不足しているためヘムまで変換されず蓄積します。

がん細胞は5-ALAを細胞内に取り込むトランスポーターPEPT1の発現が多く排出するトランスポーターであるABCG2の発現が低下しているのでPpIXが蓄積されるとも言われています。 光増感性を持つPpIXは、青色に励起され、基底状態に戻る際に赤色蛍光を発します。このような5-ALAの性質を利用してがん細胞を可視化することが、光線力学診断の機序です。

引用書籍 石沢 武彰(2020)術中蛍光イメージング 実践ガイド(ラボからオペまで)メジカルビュー社(引用改変)

肝臓がん

肝臓の外側右葉に発生した肝臓がんの摘出手術

青色(375〜445nm)の光を照射すると赤色(600〜740nm)(黄色矢印)に発色する。転移を検出

乳腺腫瘍

腫瘍を観察している(転移病巣の確認)

特殊なゴーグルを装着すると腫瘍がピンク色(矢印)にひかる。中央にある黄色い部分は壊死している。

腫瘍外科(肝臓腫瘍 副腎腫瘍 乳腺腫瘍 膀胱腫瘍)

転移腫瘍を光らせる

PDT(光線力学療法)

光線力学療法(Photo-dynamic therapy; PDT)は腫瘍だけでなく細菌抑制や肺がんの治療など様々な治療に応用されている。
確かに紫外線殺菌や赤外線など色々なものに光は利用されている。
楽天からイルミノックスという光免疫療法の薬剤が認可され特に手術が難しい場所などに利用できるのではないかということで注目されている。
現在、神経腫瘍や膀胱腫瘍、肺がんなどで適応されている。
ALAを使用した光線力学療法は同じような原理で特定の波長のレーザーを病変部に照射してがん細胞を死滅する治療法です。

今のところレーザー光が640前後の波長のものを使用しなければならないので入手が困難で高額である。
動物では現在一部の大学でしか行われていません。
高度先進医療であり動物で普及するにはまだまだ時間がかかることが想定されます。
当院では実施することができますが、かなり症例を絞らせていただくことにはなると思います。
詳細を知りたい方はメールでの相談でお願いします。
返信が遅れる可能性もありますのでご了承ください。
(電話は大変混み合いますのでメールでよろしくお願いします。)

光線力学療法(Photo-dynamic therapy; PDT)の様子

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